スマホやパソコンのおかげで、わたしたちの暮らしは飛躍的に便利になりました。
得たい情報をすぐに得ることができるようになり、どこでも仕事ができて、いつでも家族や友だちと連絡を取り合うことができます。
便利になった反面、一日中情報で頭がいっぱいになり、心を落ち着かせる時間が激減してしまいました。
「充実していていいじゃない!」「 効率がいいのが一番だよ 」と思いますか?
脳は休みなく働き続けると、疲労がたまっていきます。そしてその疲労が原因で、さまざまな不調を起こしてしまうのです。
今回は、脳疲労の原因のひとつであるマインドワンダリングについて説明します。
脳疲労の症状や、疲労を改善するのに役立つ簡単なマインドフルネス法などについてもお話ししたいと思います。
マインドワンダリングってなに?
仕事中に「 来週のプレゼンうまくいくかな… 」と考えたり、ご飯を食べながらスマホで調べ物したりすること、ありますよね。
何かしながらも、別のことが気になってしまう状態のことを、脳科学では「 マインドワンダリング 」といいます。
マインドワンダリングの状態が長く続くと、脳はどんどん疲れてしまうのです。
マインドワンダリングになると、幸福度が下がる
マインドフルネス( 今ここに集中 )の逆の状態が「 マインドワンダリング 」(さまよっている心)です。マインドワンダリングの状態のときは、幸福度が下がってしまいます。
今目の前で起きていることに集中している「マインドフルネス」の状態のときは、幸福感が上がります。
ですが、現実に取りかかっていること以外のことを考えている「 マインドワンダリング 」の状態のときは、幸福感は下がってしまいます。
それがたとえ、プラス思考の考えであっても、幸福感は下がるのです。考えが中立・あるいはマイナス思考になると、不幸な感覚が強まります。
マインドワンダリングになる理由
「 情報過多 」「 マルチタスク型 」の現代社会が、マインドワンダリングにおちいりやすい状況を作っています。
そのため、脳疲労で苦しむ人が増え続けています。
情報過多社会
パソコンが普及して、インターネットを利用する人が増えたことで、処理する情報が激増しました。
そしてさらに、どこでも持ち運べるスマートフォンを誰もが持ち歩くようになったことで、情報に触れる時間がさらに増え…
脳は常に忙しく働き続けなければなりません。
マルチタスク型社会
誰もが常に忙しい時代です。
ビジネスの世界では、グローバル化やテクノロジーの進歩で、スピーディーに仕事をこなすことが求められています。
主婦(主夫)たちは、あわただしく家事をこなし、家族のスケジュール管理や、複雑な人間関係の対応などで大忙し。あらゆることに臨機応変に対応しなくてはならないので、頭の中は常にフル回転です。
子どもたちでさえ、学校の勉強や習い事、部活や塾など、休みなく活動しなくてはなりません。
多くの人が、今目の前の出来事に集中する余裕もなく、複数のスケジュールを同時進行でこなしながら毎日を過ごしています。
過密スケジュールをこなしているときは、常に交感神経が活発になるため、自律神経が乱れます。そうすると、ますます不調に陥りやすい状態になってしまいます。
「 自信をつけたい 」「 結果を出したい 」「 家族を幸せにしたい 」と一生懸命にがんばり続けた挙句、脳疲労のせいでイライラし、集中力が低下したり、ケアレスミスも多くなってしまうのは、なんだかもったいないような気がします。
休息時間を作ってリフレッシュすることも、まじめな努力家の人が、「 がんばって 」取り組まなくてはいけないことなのかもしれません。
脳疲労の症状
脳の疲労はひどくなると、不安障害やうつなどの、心の不調につながることがあります。
あなたの脳疲労度はどれくらい?
- 前はがんばれたのに、今はなぜかがんばれない
- 最近何もやる気が起きない
- 夜寝付けない
- 朝スッキリ起きれない
- 夜中に何度も目が覚めて、ちゃんと寝た気がしない
- 集中力が続かない
- 最近ケアレスミスが多い
- 「話聞いてる?」とよく言われる
- 好きだった食べ物さえおいしく感じなくなった
- わざわざ外食しようとは思わない
- 遊びに出かける元気がない
- 最近笑わなくなった
- 悪いことは自分のせいだと感じてしまう
- チェックが3点以上だと、脳の疲れがたまっている可能性があります。
- 5点以上は要注意です。これ以上疲れをため込まないように気をつけましょう。
脳疲労改善のために大切なこと
「 自分の脳疲労やばいかも… 」と思っても大丈夫です。
焦らずゆっくりとマインドフルネスを意識した生活に切り替えていくことで、脳疲労を軽減させることができます。
脳疲労を改善するためのマインドフルネスに取り組む前に、「 考え方 」から理解する必要があります。
まずは「自分自身を理解しようとする」ことが大切なのです。
まずは「気づく」こと
念起こらばすなわち覚せよ、之を覚せばすなわち失す
「 つらい 」「 悲しい 」「 苦しい 」というネガティブな気持ち(=念 )を持っていることに気づきなさい。そういった気持ちに気づくだけで、それがだんだん消えていくから
道元禅師 | 曹洞宗の開祖 日本の全思想を確立する |
自分の状況に気づくだけでも、心が楽になります。
「 疲れている 」と自覚すれば、「 疲れをとろう 」という意識が働くので、自然と解決に向かって心が動こうとするのです。
「 しょうがない 」は魔法の言葉
禅寺の和尚さんに、「 何かを失って悲しい 」ときはどうしたらよいかと聞くと、こう答えるでしょう。
悲しいのはしょうがない
放っておきなさい
ここでいう「 しょうがない 」は、「 仕様が無い 」ということ。
- やりようがない
- 対処方法が無い
悲しい気持ちは無理に変えようとせず、「 放っておく 」しかできないということです。
悲しい感情はそのままにしておきながら、きれいな景色をながめたり、おいしいものを食べたり。いい意味であきらめること。
そうすると、いつの間にか頭の中が落ち着いていき、目の前の出来事に対して幸せを感じるようになっていきます。
「 別に悲しくない 」と自分に言い聞かせようとすると、いつまでたっても考えが頭から離れずに、悲しみを手放すことができなくなってしまうのです。
そうすると、立ち直るまでに時間がかかってしまいます。
「 しょうがない 」「 放っておく 」「 あきらめる 」という言葉は、ネガティブなだけではありません。とらえかたによっては、とてもマインドフルな考え方なのです。
まとめ
情報過多・マルチタスクの現代社会の中で、脳疲労の不調を抱えて苦しむ人が増えています。
同時にいくつもの仕事をこなすなど、目の前の出来事に集中できないことを「 マインドワンダリング 」といいます。
マインドワンダリングの状態では、幸福感が下がってしまうので、心の不調を抱えることに。
焦らずゆっくりとマインドフルネスを意識した生活に切り替えていくことで、脳疲労を軽減させることができます。
脳疲労を改善する第一歩は、「 自分の気持ちに気づくこと 」です。
そして、ままならなさや悲しみを感じたときは「 しょうがない 」と放っておくこと。
ネガティブ感情を放っておいたまま、マインドフルに過ごすことで、だんだん脳の疲れは癒されていきます。