「今ここに意識を向ける」という心の状態のことを、マインドフルネスと言います。
過去や未来を気にかけていると、今目の前で現実に起きていることではないことに不安になったり、イライラしてしまいます。
マインドフルネスの状態になるくせをつけると、ストレスを減らすことができるようになるのです。
とても簡単で、1分間でも効果が出るものなんですよ。
マインドフルネスとは
マインドフルネス=瞑想ではありません。
マインドフル状態( 目の前のことに集中している状態のこと )になるための方法のひとつが瞑想ということなのです。
目の前の出来事に集中するために、瞑想をするのです。
過去でも未来でもない、今の自分が感じていること・取り組んでいることに意識を向けるということです。
頭の中で、昨日の失敗を思い返してくよくよしたり、やらなくてはならない明日の予定などを考えることは誰でもありますよね。
スマホやテレビに夢中になって食事の味を覚えていなかったり、会話しているときにこの後のスケジュールを思い浮かべるなど、「心ここにあらず」の状態をマインドワンダリングといいます。
今じゃない出来事に意識が飛んでいるマインドワンダリング状態は、脳を疲れさせてしまいます。
脳の疲れのサイン
- 集中力の低下
- 物忘れが多くなる
- 体がだるくなる
- 眠りが浅くなる
- 感動しにくくなる
- 笑うことが減る
脳の疲れを癒す一番いい方法は「睡眠」です。
なんと、マインドフネスは寝なくても脳を休めることができる方法なんです。
マインドフルネスに取り組むと、寝ているときのようなリラックス感を得ることができるので、脳の疲労が改善しやすくなります。
「 最近忙しくて、あんまり寝れてないな 」という人におすすめです。
日常生活に取り入れるマインドフルネス
日常生活の中にマインドフルネスを取り入れる方法は、たくさんあります。
食事のとき、味に集中しながら食事するだけで、「食べるマインドフルネス(マインドフルイーティング)」になります。
マインドフルネスは、お寺の修行としての瞑想のように雑念を払う必要はありません。
「ちょっと味が濃かったな(と思った)」「いい香りがする(と思った)」というように、雑念が浮かんだ自分を客観的に眺めることが、マインドフルネスのトレーニングになるのです。
雑念はあっても、そのままにしてほっておく。
例えば、ウォーキングをしているときに、自分の足の動きに意識を向けることに集中します。(歩くマインドフルネス)
そのとき頭の中に「 今日のお昼ごはん何にしよう 」「 昨日の失敗はひどかったな 」などの雑念が浮かんだとします。
浮かんできた雑念があるということに気づきながらもスルーして、「いま」自分が取り組んでいることに気持ちを傾ける。
日々の生活の中で、マインドフル状態になる時間を1分作るだけでも効果があるといわれています。
何かに集中しながら、浮かんでくる雑念をスルーすることを繰り返していくことで、ストレスを鎮める効果がある「アルファ派」という脳波が強く出るといわれています。
短い時間でも、マインドフル状態になろうと意識して過ごす時間を作るだけで、脳を休めることができるんです。
心食堂のマインドフルネス
マインドフルネスの目的や実践方法はいろいろあります。
教える人によって価値観が違ってくるものなので、自分に合った価値観で学ぶことが大切だと思います。
わたしたち心食堂で扱うマインドフルネスは、川野泰周先生の教えがベースとなっています。
川野先生は、僧侶で精神科・心療内科医です。お寺とクリニック両方でお仕事をされているそうです。
僧侶と精神科医なんて、珍しい経歴ですよね。
禅の修行である瞑想が、心をマインドフルネス状態にするのに理想的なのだそう。
マインドフルネスと瞑想の違い
マインドフルネス・・・・・今目の前の瞬間に集中
瞑想・・・・・特定のテーマに集中することで、心の落ち着きを得るための取り組み
修行というと、なんだか厳しそうだと思いますか?
マインドフルネス瞑想は、雑念があってもかまいません。
ゆる〜く取り掛かるだけでも効果はあります。
川野先生は、日常のなかで気軽に取り組むことができる、簡単なマインドフルネス瞑想を提唱されています。
時間や場所にこだわらず、1分だけでも瞑想するだけで、ストレスは軽くなります。
マインドフルネスに取り組むときの心構えは、
- 決まりごとにこだわらない
- うまくできなくても気にしない
- うまくできていないと気にしている自分自身を気にせず受け流す
- いつでもどこでも、やりたいときにやって、やりたくなかったらやめる
簡単すぎるズボラ瞑想にゆるく取り組める人のほうが、うまくいくのだそうです。
ただ目の前のことに集中する。
「昨日あんな失敗しちゃった」
「来週テストだ~」
そうやって人は、過去や未来に考えを巡らせることができます。
大切な家族ができると、自分のことではない出来事にまで、心配や不安を重ねることに。
過去や未来、自分以外の出来事に心を動かしていると、現実に起きていないことにばかり気をとられ、不安になったり、イライラしてしまうのです。
そんな時、素早くストレスケアできるのが、マインドフルネスです。
心をマインドフルネスの状態にする習慣がつくと、脳疲労が低減して心が安定し、ストレスを減らすことができるようになるのです。
マインドフルネスは、心の筋トレとも言われています。
例えば、過去や未来にさまよってフラフラしてしまう心を、体幹が弱ってまっすぐ立てない体だとします。
それをマインドフルネスという心の筋トレで、しっかりとした体幹の強い心に鍛える、ということなのです。
日々を大切に過ごす
慌ただしさで通り過ぎてしまう日常の中でも、マインドフルネスのトレーニングができる瞬間がいくつもあります。
入浴、ペットとのふれあい、植物を愛でる、朝日を浴びる、夕暮れの景色を眺める…
そして、必ず毎日3回訪れる食事の時間。
それをマインドフルネスのトレーニングに生かすのです。
今日はあまりにも忙しくて、コンビニ弁当ばっかりだ~という日でも大丈夫。
たとえジャンクでも、楽しみながらいただくご飯は、イヤイヤ食べるバランスの取れたごはんよりも、心と体にいい効果が得られるそうです。
医学博士・免疫学者である安保徹先生によると、免疫力を高めるためにも、楽しく食べることは効果があるのだそうです。
私たちは、無理な生き方をしていたり、強いプレッシャーがあると副交感神経を刺激してリラックスし、ストレスから逃れようとします。その、最も手っ取り早い手段が「食べること」です。
そのため、食事は楽しく食べることが大切。いつも満腹になるまでたべないとダメだったり、仕事をしながら慌ただしい食事ではリラックスできず、どんなにおいしい食べ物を食べても副交感神経は刺激されません。
安保徹 杉本恵子監修(2014年)「安保徹が教える免疫力を10倍高める食べ方」株式会社永岡書店(p14)
楽しく食べるというのは、心にも体にも大切なんですね。
毎日当たり前にやり過ごしている出来事に、「心から味わう」という価値観をプラスする。
そしてただ、目の前のことを楽しむ。それだけでマインドフルネスになるのです。
簡単にできるマインドフルネス( マインドフルイーティング )
ドライフルーツマインドフルネス( ドライフルーツ以外の食べ物で行ってもOK )
好みのドライフルーツを準備する
指でつまみ、色、形、しわなどを観察する
食べたらどんな味がするかイメージする
口の中に自然と唾液があふれてくる
舌の上で転がし、味や形を口の中で十分感じる
ゆっくりかみしめる
何度もかんでから、飲み下す
ドライフルーツがのどを通り、胃に溶けてゆく様子も想像する
マインドフルイーティングのメリット
- 少ない量で満足感が得られる
- ストレスからくるやけ食いを防げる
- ゆっくり食べることで、満腹感を得られる
丁寧にゆっくり味わって食べると、今まで気づかなかったおいしさを再発見できます。
ちなみに、少量で満足感を得られるようになるので、ダイエットにも効果があるんですよ♪
おやつや食事のときに、始めの1分間だけでもマインドフルイーティングを取り入れてみてはいかがでしょうか。
マインドフルネス実践後の変化
- やるべきことにすぐに取り掛かることができる
- 集中できる時間が長くなる
- 人の心に敏感になり、マネジメント力がUPする
- 脳が疲れにくくなるので、余裕が生まれる
- 不安になりにくくなる
- トラブルに落ち着いて対応できるようになる
- 人への気配りできるようになる
- イライラが減り、穏やかになる
- コミュニケーション力がUPし、周囲の人との関係が良くなる
マインドフルネスを実践すると、こんなにいろいろな変化が現れます。
逆にいうと、改善前の状態が脳疲労の症状だといえますね。
前は優しかった友だちが、最近なんだか違うひとみたいに変わったのはなんでだろう…
もしかしたらその人は「 脳疲労 」かもしれませんね
脳疲労で苦しんでいる人は、うまくいかない自分を自分自身で責めてしまいます。
それをさらに周りの人が責めたり叱ったりしてしまうと、症状がどんどん悪化してしまうのです。
そうなる前に、マインドフルネスで脳疲労のセルフケアをする習慣を身につけることをおすすめします。
自分自身のセルフケアにも、身近な人へのサポートにも、マインドフルネスで心のセルフケアを身につけましょう。
マインドフルネスの効果
マインドフルネスは、うつや不安障害などの心の病にも効果があることが証明されていて、実際に医療現場でも取り入れられています。
普段からマインドフルネスに取り組む習慣をもつことで、不調に悩む前の予防ができるのだそうです。
責任感が強くてがんばりすぎる人は、義務でやっていることまで、一生懸命がんばってしまいます。
何もかもがんばってしまうのでストレスがたまり、心がついていかなくなります。
そして、それでもがんばり続けた果てにバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥ってしまうのです。
バーンアウト
強い責任感を持って意欲的に働いていた人が、心身共に疲れ果て、燃え尽きたように情熱や意欲を失う症状
受験や部活、就職活動や過酷な労働環境など、がんばらなくてはならないことが多い現代社会では、バーンアウトで苦しんでいる人がどんどん増えているのが現状です。
脳疲労で心がボロボロになってしまう前に、心の病気の予防やセルフケアとして、日常生活にマインドフルネスを取り入れることが大切ですよね。
マインドフルネスを実践すると、脳に変化が表れます。
- 海馬(記憶を司る)が大きくなる
- 偏桃体(情動を司る)が小さくなる
実際に脳に変化が現れるので、記憶力の向上や感情が安定するなどの変化が起こるのです。
海馬が元気になると、大きくなって暴走しがちな扁桃体のコントロールがしやすくなるそうです。
このように脳機能から見ても、マインドフルネスは心を落ち着かせるために有効ということなんですね。
おわりに
子どもも大人も、慌ただしい毎日を生きる現代社会。
情報にあふれて、今目の前の現実だけを見て過ごすことが難しい世の中です。
勉強や仕事を一生懸命がんばりすぎたはてに、脳疲労で苦しむ人がどんどん増えています。
「いつもより集中できないな」「なんだかもやもやする」
そんなちょっとの変化こそが、脳の疲れのサインです。
意識して、1日1分マインドフルネス習慣を作ってみてはいかがでしょうか。