体の中では、互いに離れた場所にある脳と腸。
実はこの二つ、密接に関わり合っているんです。
腸の健康を守ることは、脳の健康にとっても大切なこと。
腸と脳がどうやって関わり合っているのか、詳しくお話したいと思います。
脳腸相関
腸には独自の神経ネットワークがあり、脳の指示がなくても腸自身が判断を下す力を持っています。
ニューロンは脳にあるイメージが強いかもしれませんが、腸にもたくさんのニューロンが存在しています。
腸には迷走神経という大きなニューロンがあって、脳へ情報を伝えています。
脳から腸→落ち込みやストレス、異常事態などを知らせる
腸から脳→不調のサインや有害物質が伝えられる
精神的ストレスでお腹を壊すという経験をしたことはありませんか?
ひどくなると「過敏性腸症候群」という病気につながることがあります。
腹痛とともに下痢や便秘などが慢性的に繰り返されるので、電車に乗っている間にトイレに行きたくなるなど、日常生活に影響が出てしまいます。
過敏性腸症候群は、日本人の10~15%が患っていると言われていて、認知症とも関係が深いことがわかってきました。
腸内環境の悪化により、大腸の中に「 シヌクレイン 」という異常たんぱく質が大量に発生すると、迷走神経を通じて脳に届きます。
脳に有害なたんぱく質が蓄積することで、パーキンソン病や認知症( レビー小体型 )を招くということがわかっています。
こうして脳と腸は、さまざまな情報や物質などを互いにやり取りしてつながり合っています。
幸せ気分を作る「 セロトニン 」も
腸でたくさん作られているんですよ
腸でつくられるセロトニン
幸せホルモンと呼ばれるセロトニンという神経伝達物質は、その90%以上が腸管でつくられるといわれています。
- 腸の働きを活発にする
- 自律神経のバランスを整える
- 心を前向きにする
『腸での感覚』が気分を支配している
食事でとる栄養素によって、さまざまな神経伝達物質が作られます。
心の状態は、神経伝達物質によって大きく影響されます。
栄養成分を直接腸に注入することでも腸内で神経伝達物質が作られるので、気分が変わるという研究結果もあります。
脂肪を注入→脳でドーパミン放出が増えて幸福感や喜びが増す
炭水化物を注入→脳でセロトニンが放出されて気分が良くなる
「 気分 」は食べたもので変わるんですね
腸内細菌のバランスが大切
腸の健康状態は、腸内細菌のバランスに左右されます。
腸内細菌の数は約100兆個(成人)で、その種類は数百種。
善玉菌と悪玉菌、日和見菌の3つに分けられ、それぞれが消化や免疫にかかわっています。
善玉菌 | ビフィズス菌や乳酸菌 腸内環境を整える 老化防止 病気防止 |
悪玉菌 | ウェルシュ菌や大腸菌 増えすぎると下痢や便秘、腸炎を引き起こす |
日和見菌 | 状況によって善玉菌や悪玉菌の見方をする菌 |
腸内細菌のバランスを整える食習慣は、脳のメンテナンスにもなるということ。
日和見菌は、善玉菌と悪玉菌の多い方に合わせて形を変える性質があります。
悪玉菌が多くなりすぎない食事や生活習慣が大切です。
腸内細菌のバランスは、食習慣や年齢などによって異なります。
- 腸内環境のエサになるオリゴ糖や食物繊維をとる
- バランスよく食べる
- 野菜・果物を積極的に食べる
- ストレスがたまらないような生活
まとめ
脳腸相関は、脳と腸の相互関係を指し、特にセロトニンの90%以上が腸で生成されることが重要なポイントです。
腸内細菌のバランスも大切です。
健康な腸内バランスは消化や免疫システムに影響を及ぼし、セロトニンの生成にも関連します。
脳腸の相互作用が乱れると、精神的な不調や消化器系の問題が起こる可能性があります。
腸の健康と心の健康の両方に意識を向けることが、より良い生活につながるでしょう。
脳の健康のためにも、日頃から腸内環境を整える生活を心がけましょう。
参考文献
枝川義邦( 2015 )「脳が若い人と脳が老ける人の習慣」.明日香出版社.
江田証 ( 2019 ) 「新しい腸の教科書」. 池田書店.